Goodies#326: 青い椅子の話

この写真の真ん中あたり。

青い椅子の話

ちょうど突き出た半島ようなところに、青い点と赤い点。見えますか?

道路脇の階段を降りていくと、この小さな「半島」(?って呼ぶにはあまりにも小さいのですが。半島の様な形の海岸です)の先まで歩くことができる。その先っちょの方にぽつねんと置かれているもの。

青い椅子

青いガーデンチェアーが二つと赤いのが一つ。あるときは、青と青がこうして隣同士に並んでいるし、また別の日は、三つが全く違う方向を眺めていたりする。

気がついたらこの小さな半島には、こんな風に椅子が3つも並んでいたわけです。

が、2週間前の地方新聞に、この椅子にまつわるお話が書かれていた。

実は、この三つの椅子がここに現れたのは、今年に入ってからのこと。この場所に、「初代の青い椅子」が突然現れたのは、もう4,5年前のこと。その証拠に、これ(↓)。

青い椅子

Gus on the ORIGINAL BLUE CHAIR. 鼻にトレーニング用のリードを付けているから、うん、Gus はまだ一歳になってないかな。海の風や波にさらされて、色もはげてしまった青い椅子が、初代のもの。たった一つのこの初代の青い椅子は、いつの間にか小さな半島のシンボルになっていました。

地方新聞によると、初代の青い椅子を置いたのは、男の人だったそうです。彼がとても気に入っていた青いガーデンチェアーは、彼の前のガールフレンドからの贈り物だったんだって。それを知った現在の彼女(奥様)が、「その青い椅子、どっかに捨ててきて。あなたが捨てないなら私が捨てる。」ということになったんだそう。そこで、この男性、夜遅くにこの青い椅子を小さな半島の先まで運んだんだって。彼は、「捨てた」あとも、何か考え事をするときや、ただぼぅっとしたいときにはこの半島にやってきて、青い椅子に座ったそうです。

ここを通って椅子が空いていると、何故か自分の為に特別に席が空いてあるような気持ちになるから不思議。「ちょっと座っていこう。」と腰掛けて、海を眺めて、形にならない思いを漂わせたりするものです。私だけではなく、きっとたくさんの人が同じように「ちょっと座ってみた」ことだと思う。

ところが去年の冬、大きなストームが来たときに、この初代の青い椅子はボロボロになって、パーツが一つ、二つと波に流されて行ったんだって。

ある日、青い椅子がこの場所からすっかり消えてしまったのに気づいた「あの男性」が、こっそりと新しい青い椅子を買って、同じ場所に置いたらしい。

そして、突然現れた「新しい青い椅子」を見た別の人が、同じ想いでもうひとつの「青い椅子」を隣に並べた。そして、何を思ったか、また別の人が、今度は「赤い椅子」を持ってきた。

… というわけで。三つのガーデンチェアー。

青い椅子

Gus が座って(?)いるのが、初代のものにとって変わった椅子。椅子の背中にプレートが貼り付けてあり、「これはオリジナルの青い椅子のリプレースメントです」と書いてある。

二つ目の椅子を持ってきた人は、何を思ってそうしたのだろう、と思う。三つ目の赤い椅子も、そう。

ひとつだけだったからこその「特別さ」が、薄れてしまったきがします。

なにはともあれ。「青い椅子」の背景にあったお話を知って、余計に「初代の青い椅子」が恋しくなりました。