【秋】by 谷川俊太郎さん

数日前のこと。ふと、谷川俊太郎さんの詩を読みたくなって、昼休みに大学の図書館をのぞいてみた。すると、日本語の原文と英語訳の両方が紹介されている詩集が2冊見つかった。一つはよく知られている「二十億光年の孤独」。もう一冊は「愛について」。休み時間に読んでみた。

私は未だに英語で「詩」を心から楽しむことができない。なので、好きな詩の英訳を読んでみて、どんな風に感じるのか調べてみたかった。結果、やっぱり詩は日本語で読むほうがずっとずっと心に響くな、と思った。谷川俊太郎さんの詩の中には、子供が呼んでもリズミカルでたのしいものもあるから好き。彼の作品って言葉の抽象画のようだな、って感じることが良くある。例えば、陽で温まった海岸の石の上に座ってぼーっとしている時とか、丘を駆け登る強い季節風を感じている時とか、そういう時のひとまとめにした感情や思いってなかなか言葉では表現できない。谷川さんの作品を読んでいると、そこにあるんだけど自分では形にできないものを、抽象的な柔らかい線を残したまま表現してくれているな、って思う。

「愛について」の中で「秋」という詩を見つけた。もうすぐ秋が終わってしまいそうなビクトリア。終わらないで〜。という気持ちを込めて、紹介しまーす。

秋

谷川俊太郎

秋はあまりに遠くまでも見せるので
私はかえって死に狎れてしまう
だがまたやさしい身ぶりや
生真面目な顔が
遠い合図のように
私を新しい方へふりむかせる
私は光がうろたえながらかくすものを見
風が云おうとして云いえぬものをふと聞く

空は透き通り
空でないものがその青さをあらわにする
歌はとだえがちに帰ってゆくばかりなので
私は沈黙を歌のように歌い
沈黙もとどかないところを
幼いものののように無邪気に指さす
その時わたしはどんなものを持つことが出来る
私は城を画いては消しして遊び
海を私の涙の中へかえしてやる

大層曖昧な誰かの命令が
ゆっくりと陽を動かしているのを私は見る
日向を選びまた影を選び
私は私でないものの恋愛を追う
その間にひとや樹や本やパンと
忙しそうにじゃんけんをし
いつも気づかずに負けている

だが憧れも去ったりはせずに
また情念も帰ったりはせずに
ただ広がりが自らを守っている時
私はその中で急に泣き出したりはしない
私はただ季節が持ち去り持ち来たるものを計り
いろいろなしるしに気づきかけて気づかずにいる
終わるものも始まるものも信じないで
秋の中の自らの姿を
どんな心もなくふと点景のように思い描いたりする

秋

楽しい週末を〜!

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Goodies#41: Tanikawa Shuntaro/谷川俊太郎の一遍

夏の間は図書館の中の「仮のオフィス」で仕事をしている。本来の仕事場が工事中で使えないので。気分転換になっていい。

今日は図書館のエレベーターが壊れていたので、いつもは通らない「日本語文学」のあたりを横切ったときに、谷川俊太郎の名前が目についた。谷川俊太郎の作品で、私の好きな詩がのっているのが「62のソネット」。あるかなぁ、と探してみると…

あった。英語版:“62 Sonnets & Definitions” / Tanikawa Shuntaro”

62のソネット

この中で好きな一遍:41

Gazing at the blueness of the sky
makes me feel I’ve a place to go back to,
though the escaped brightness has none.

Sunlight everlastingly lavishly expends itself.
Even after dark, people are busy picking up its pieces.
We are basely born
and don’t know how to rest well, like the trees.

The window contains what is overflowing.
I am estranged from people
because I want no room except the universe.

To be is to ingure space and time,
and the pain reproaches me.
When I’m gone my health will return.

原文:

空の青さを見つめていると
私に帰るところがあるような気がする
だが雲を通ってきた明るさは
もはや空へは帰ってゆかない

陽は絶えず豪華に捨てている
夜になっても私達は拾うのに忙しい
人はすべていやしい生まれなので
樹のように豊かに休むことがない

窓があふれたものを切りとっている
私は宇宙以外の部屋を欲しない
そのため私は人と不和になる

在ることは空間や時間を傷つけることだ
そして痛みがむしろ私を責める
私が去ると私の健康が戻ってくるだろう

//

何年英語で生活しても、やはり、詩は母国語で読むのがいい。

青空をみると思い出す一遍でした。