直島:その三。海苔のはなし。

直島、最後の記録。

Ckに教えてもらった「海苔のはなし」を聞いてっ。

わたし、「海苔を育てる」その工程に心から感動してしまった。大きな海の一角で、海苔を育てるという作業が実際にどんなものなのか、Ckのはなしはとっても興味深かった。家に帰って家族のみんなに、まるで自分が海苔を育てているかのように興奮気味に話してしまったほど。笑。

私がぼんやりと浮かべていた「海苔の養殖」は:海の底にたくさん生えている海藻を集めてきて、港で選別などをして、撹拌みたいなことをして、平べったくして広げて干すのかなー、だった。

全然違ってた。笑。

間違って覚えているかもしれないけれど。

フェリーから直島が見え始めたときに、Ckが「あのブイ、あそこでも海苔を育てんねん。毎年抽選(くじびき?)でどの場所で育てるのかが決まるねん。」って教えてくれた。毎年同じ場所で育てるわけじゃないんやね。ほほぅ。

海苔を育てる作業は、海の水温がある程度下がってから始まる。

まずは、海苔の「種」がたくさんついた網があるんだって。これは「種」を網につける専門の業者さんがいるらしい。その網をブイのところに手作業で一枚ずつ広げていく。これが1200枚ある。千二百枚!!どんなに機会化が進んでも、AIやらChatGPTが世間を騒がしても、海苔の種付き網を広げていく作業は人の手でないとできんのよ。

そして種が発芽する。海苔ベイビーが生まれる☆ 網の縄(?ひも)にしっかりと根を張り、海苔ベイビーが成長し始めるんだって♪ 実は先週、ラインでCkが海苔ベイビーたちを回収してるでーって教えてくれた。

そう、海苔ベイビーが少し成長し始めた頃に、この1200枚の網を回収する。↓↓先日送ってもらった写真!

手前の洗濯機みたいなのが脱水機かな。ピンクの作業着の方はCkの義母さま!現役でバリバリ働いてられるっ!

ちょっと前に広げたばっかりやんっ!!!っていう1200枚を回収して(いやや〜!)、脱水機にかけ、5枚ずつ重ね、冷凍室にいれ、水温がもっと下がるのを待つんだって。

これもついこの間送ってもらった海苔ベイビーの写真!こんなのなんやねー☆感動☆

網の紐みたいなのにぷちぷちくっついているのが発芽した海苔ベイビーたち♡ 種のついた網は、元々は真っ白なんだそうな。すごい。びっしりとベイビーたち発芽してる。

海苔ベイビーはタフなのです。脱水機にかけられ、冷凍室にいれられても海苔は死なない。でも、畑で野菜を育てるのと同じように、海苔の網にも海苔ベイビー以外の「雑草」のようなものがくっつくので、そういったモノたちは冷凍室で死んじゃうんだって。

水温がもっと下がった頃、、、冷凍室から網を出してきて、また海に広げるんだそうです。1200枚。

冷凍から目覚めた海苔ベイビーたちは、びろびろとわかめのように広がって伸びて成長するんだって〜。根っこは網にしっかりとしっかりとくっついているから、伸びた部分を刈り取って集め、また海苔が伸びてくる、そうです。

すごい。

真冬の一番寒い時期に、収穫が始まる。Ckの話では、私が聞き間違っていないと、一旦収穫作業が始まると、シフト交代しながら夜通し作業を続けるんだって。日中、収穫した海苔たちが、工場に運ばれ、わかめみたいなのが「海苔」になるまでの一連の作業が、人の手と専用の機会で休みなく行われるそうな。

こんなとんでもない寒さの工場で、夜通し海苔の作業。赤子を連れて。そんな時期もあった。たまらんよね。。。

言葉では表現しきれない、寒さと厳しさがあると思う。何年経っても、きっと毎年、寒いし厳しいんだと思う。

そんな海苔のはなしを聞きながら、完全防備で海に出ていくCkのすがたを思い浮かべながら、のどかな直島の普通の道を歩いた。時間が限られていたのでほんの少しだったけれど、Ckの子どもたちもこんなところを駆け回って育ったんだなーって。

昭和が残っている。島の中の方にあったコープ。潮風を直接受けることもないから、、、昭和のまま長生きできるかな。

十分に美術館巡りをさせてもらい、島をぐるりと見せてもらい、最後にCkのお家でBBQまでしてもらい♡

旦那さんが潜ってとってきたっていう「サザエ」と「タコ」。

サザエの壺焼きやでー!なんという贅沢! ↓↓のタコさんは「お持ち帰り」させてもらいましたー♡

たくさんお土産にもらったサザエは数日後、我が家の小さな庭でのBBQでリピート壺焼きにっ!うちの父がめちゃくちゃ喜んでいた。うふふ♡ もちろん、Ckのとこの海苔もいただきましたっ!食べるたびに色々と思い出す。

この青い空と、緑と海。凍える季節に海苔の世話をする暮らし。タフでがっしりと網に根を張って成長する海苔ベイビー。Ckの変わらない笑顔と、弱音さえも吐くことがなかった芯の強さ。色々と重なった。

Ckも海苔だ(←〆がコレかい)

大好きな、大切な、AちゃんとCkとこうして再会できたこと、今振り返ってもやっぱりどこか夢のよう。この10月は再会の月だったなー。

ありがとー!!!

直島での再会:その二。

Ckに「直島で何かしたいことなどリクエストある?」って聞かれたときに、もしみんなが良ければ美術館に行きたい、と頼んだ。

限られた時間の中、3つの美術館と1つのギャラリーを巡ってもらえた♡

美術館巡りって、たくさん詰め込むと最後の方は「飽和状態」になってしまって、何を見ても「ふーーーん」っていう反応になる(私はね)。この4つは丁度よい量だったと思う。それぞれが個性的だったし、沢山の作品が詰め込まれているわけでもない。

フェリーで直島について最初に連れて行ってもらったのが、地中美術館。ずっと訪れてみたかった。その名の通り建物の大半が地面の「中」に建設されているという安藤忠雄さんの設計・作品。

最初に訪れたから、という理由だけではない。見て回った中で、この地中美術館が一番好きだった。

むき出しのコンクリートの建物なのに、なぜか「つめたさ」を感じなかったのがとても不思議だった。Ckがいてくれたので、ところどころで建物や展示されているアートのことを教えてくれて、それもとてもありがたかった☆ はっと気付かされたことのひとつは、「この美術館は地面の下にあるけれど、全部自然光で照らされているねん。だから天気によって作品の見え方も変わるねん。」っていうこと。本当に「電気」がなかった。だから、コンクリートがあんなにも柔らかく感じたのかもしれない。

地中美術館では写真撮影禁止。それはある意味、嬉しいことです(といっても、どこかの国のひとたちは写真撮ってたけど)。スマホをしまい、みんながただ作品を鑑賞し、作品と向かい合うときをただ体験するということ。

本当に久しぶりに、鳥肌が立つような感動をした。

一番最初の部屋のモネの「睡蓮」五点。真っ白な部屋で自然光に照らされたモネの作品には息を飲んだ。表現に困るほどの美しさで、こんなに美しいものを見たのは初めてかもしれない、って思った。もう一度行けるなら、雨の日に見てみたい。

それから、この地中美術館の中でもう一つ「すごい、なんなんだこれは!」と感動したのが、ジェームス・タレルの「アフラム、ペール・ブルー」という作品。光を操るアーティストなんだそうで、初めて聞いた名前で初めて見た作品。今まで、こういう「光」とか「映像」のアート作品に対する私の反応は、一様に「ふ〜〜〜〜ん。」だった。でもタレルのこの青い空間は、、、不思議すぎた。人数制限されて四角い箱のような部屋にはいるんだけど、その部屋全体が光に包まれ、目の前の青い光が少しずつ変わっていく。ただそれを見つめているだけで、海の底にいるような、宙に浮かんでしまったような、もっというと、お母さんのお腹の中にいるような(知らんけど)、ふわぁ〜んとした心地よさを感じた。ずっとずっとそこに立っていられそうな。あれはすごかった。

地中美術館のあと「ウーリーファン」という韓国人で在日のアーティスト?の美術館にGo! この建物も安藤さんのもの。

正直な印象:ウーさんの作品は「ふーーん。」だった。笑。

ミニマリストというのでしょうか。ものすごい分厚い鉄板のひとつの角だけが微妙に「沿って」いたり(←これが作品)、セメント(かな?)が固まる前に指で「ぴっ」ってひっかいたもの、とか、大きな真っ白のキャンバスに太い筆でシャッシャッって筆跡がいくつか残されたもの、とか。ひと通り見た後に、Aちゃんと顔を見合わせ「これ、私にもできるよな」「せやせや、できるで。で、こういう素晴らしい空間に飾ってもらったら、スペシャルに見えるんやって。そういうもんや。」と、失礼なことを言って笑った。

ウーリーファンさんのアートよりも、夢中になっているのは。

しゃーーー!っと羽を上げてたカマキリ。カマキリ見たの、すんごい久しぶりで。テンション上がりました。

直島の草間彌生のアートというと、かぼちゃだけではなかったYo!

去年できたというヴァレーギャラリーにも連れて行ってもらった。ステンレスボールがたっくさん。ナルシスの庭(?だったかな)の池に浮かべられたものは、風でゆっくりとあちらこちらに移動して、時折、からんころんと音をたてていた。

このヴァレー(Vally、谷間)は「良い気」が存在するらしいよ、ってCkが教えてくれた。

月夜の夜、このボールたちは月の光を反射して明るくなるのかな。

この小さなギャラリーは楽しかった。無造作に置かれているようで、きちんと決められた位置にたくさんのボールがあった。

空間が有機的に見えてくる。

↓↓ この部屋に詰め込まれているの。ぶつぶつ系が苦手な人は「ひく」と思う。私も「はすの実」とか苦手なので、ちょっとだけ「ひぃっ」としてしまった。

初夏のような暑さの中、なんとかバスにも乗れて最後に向かったのは「ベネッセハウス」!

ここは色んな(コンテンポラリー?の)アーティストたちの作品が展示されていて、中にはとてもユーモラスなものやメッセージ性の高いものがあり楽しかった☆

中でもこれ! これ、最初は「世界の国旗を並べているだけだな」って思った。

で、Ckが説明してくれて「これ、アリの作品やで。国旗が全部チューブで繋がってて、アリが歩いて線ができてるねん。だから、国旗にはない色の砂が混じってたりするやろ?」って。

コンセプトがおもろーい! アリの通路がいっぱいの国旗もあれば、片隅だけちょこっと線がはいってるのもあって。不思議で面白かった。

あとで、全部の美術館を見終わった後に、「ぜーんぶ見た中で、どれが一番心に残ってる?」ってAちゃんに聞いた。

「わたしはアリやな。あれが面白かったわー!」って言ってた。

私は地中美術館のモネの睡蓮かな。感覚が吹っ飛んで、ちょっと泣きそうになったし(恥ずかしかったから言えへんかったけどっ。笑)

三人で大きな石の上に寝そべって空を見上げた。この石も作品だった。
こうして、25年以上のブランクの後、三人がこの場所に一緒にいて空を見上げていることの奇跡。ありがたい。

Ckっ、直島美術館巡り、どうもありがとう!!感動したー!!

直島での再会:その一。

香川県直島町。

直島に根を下ろした友だちがいる。Cちゃん。Ckって呼ぼう。

今回の帰国中、25年+ぶりで、直島で、しかも共通の友だちAちゃん(高校仲間の集いでも一緒だった)と一緒に、Ckに会えた☆

弾丸・日帰り直島での再会の旅!

あの一日のことは夢のようで、どうやって記録すればいいものかと頭の中で想い出を「捏ねて」いた。笑。

短大のときに同じ学部で同じクラスをいくつか取り、友だちになった。若いころって、何がきっかけでどんなノリで友だちになってたんだろう。Ckは私とは全く違うタイプだと思う。女性らしくてきれいで。真面目で芯が強くて。関西人の面白さ、ツッコミのうまさは持ち備えていたけれど、どうしてCkが私みたいなのんと友だちになったのだろうって今でも不思議に思うことがある。当時は、いつも困ったようなちょっと泣きそうな顔をしていたCk。

そんなCkは、直島の海苔の養殖業を営む家に嫁いでいった。

そう、「海苔の養殖業」。

それがどんなものか詳しくわからないとしても、二十歳そこそこの都会育ちの娘がよ、「養殖」なんて稼業に飛び込んでいって辛くないわけがない!ということは想像できた。ネットもない時代、時々届いたCkからの手紙には「一年で一番寒い時期に、夜を通して一家総出で海苔の作業をするんだ」というようなことが書いてあり、あのCkが。。。寒いだろうな、手にしもやけもいっぱいできてるんとちゃうかな、辛いときに話せる友だちはいるんかな、泣きそうな顔して頑張ってるんやろな。。。っていつも思っていた。

ずーーーっと連絡がとれなかった。でも、ふっと思い出すことがあったんよね。ネット検索する以前から私の中には「直島ってきっとこんな風」っていうイメージがあった。海苔の養殖はしんどくっても、子供を育てるのには良い環境なのかもなぁ… Ckの子どもたちは美しい島を駆け回っているんだろうなぁって。

高校の懐かしい友だちたちと「しゅっ」と繋がったように、Ckとも同じときに連絡が取れた。今までにも、Facebookで探してもうまく見つけられなかった。それが、Aちゃんが「多分コレやで」って教えてくれたアカウントにDMを送ったら即効返事がきた。一時帰国中に直島で、3人で会おう!って決まった。

6時前の電車に乗り、途中の駅から乗ってきたAちゃん。

話が長くなるので端折るけど、、、このAちゃんは、ほんっっまにおもろい。明るい。昔からそうだったけど、彼女がいるとみんなが笑う。ちょっと日本人ばなれしたはっきりとした目鼻立ちで、ペコちゃんみたいでかわいい。口開くと、関西のおばちゃん。あれだけひとを笑わせることができて、前向きで愉しいのって、素晴らしい才能。

そのAちゃんね、前日に3人のグループラインで「スーツケース持って行こかな。泊まらせてもらおかな。」みたいなことを呟いてた。Ckも「泊まり泊まり!」みたいな冗談を返してた。

朝、駅のホームに立ってたAちゃん。黄色いスーツケース持ってた。。。

「なんなん?Aちゃん、ほんまに泊まることにしたん???何はいってんのん?」

「ちゃうちゃう、空っぽやで。笑。ほら、なんや帰りに荷物が出るかわからんやろ?その荷物(←私の)、こん中いれたろか?」

Aちゃんも、25年ほど前に里帰りをしていたCkと、わたしの実家で三人で会ったのが最後だったって言ってた。行きの新幹線の中、あの時はあーやったな、こうやったな、ドキドキするなぁー!と、はしゃぎながら二人でフルーツサンドを分けて食べた。岡山駅にはあっという間についてしまった。

岡山駅でのCkとの再会は、忘れられない。

うれしくて、笑えてきて、涙が出てきた。

めちゃくちゃでっかいファンシーな車で迎えに来てくれていたCk☆ 怖いくらいぜんっっっぜん変わっていなかった。なんなん、直島町民は歳とらへんのん?

宇野のフェリー乗り場までの道中、25年の空白をどこから埋めれば良いものか、とにかく大笑いしながら思いつくことを片っ端から聞いて話して。小さなフェリー乗り場がかわいらしい。私の住む島の周りのガルフアイランドへの小さなフェリーを思い出した。でも中はとってもきれいでスッキリ。フェリーにのってすぐに気づいたのは、外国人がたくさんいたこと。直島はアートで有名になってからというもの、旅行客だけでなく永住している外国人も結構いるらしい。

瀬戸内海の島々を見るとホッとする。これも、私が今住んでいるところの風景にかぶるものがあるからかな。Ckがこちらのフェリーに乗ったら、きっと同じように感じるんじゃないかな。

いよいよ直島が見えてきた!

ずーーーーーっと思い描いていたCkの暮らす島!

続く。