Goodies#52: 高村光太郎のぼろぼろな駝鳥&駝鳥農場

今日、地元の野菜や果物・保存料の入っていないお肉などを売っているお店に立ち寄ったときに、「ローカルファームフェアー」のテーブルがあるのに気づいた。この島で採れた、新鮮なものが並んでいた。農家の朝市のような感じ。

そのコーナーの「今日の一品」が、「駝鳥の肉」だった。ぞっとして写真もとらなかったのだけど、赤いカタマリのお肉でした。実は、私の住んでいるバンクーバー島のサンニッチというエリアには、広々とした畑や酪農場があるのですが、その中に「駝鳥農場」もあるのです。このお肉はその「Saanichton Christmas Tree & Ostrich Farm」のものでした。

『だちょうかぁ…』と、ふと高校の教科書にのっていた「ぼろぼろな駝鳥」を思い出した。
高村光太郎の「ぼろぼろな駝鳥」を初めて読んだときは、遠くアフリカを見つめる駝鳥を想像して、本当に涙がでそうになった。

ostrich from wiki

英語訳では、全くといっていいほど私の心にひびきません。こんな風です。

Ragged Ostrich by Kotaro Takamura

What fun is there in keeping an ostrich?
Don’t you see how in the twenty square yard mire of the zoo
its legs are too great?
How its neck is too long?
How for a country with snowfall its feathers are too tattered?
It becomes hungry, so it eats hardtack, sure,
but don’t you see how the ostrich’s eyes are looking only into the distance?
How they aren’t all there, burning?
How they’re waiting for an emerald wind to blow at any moment?
How its small innocent head is swirling with boundless dreams?
How it no longer is an ostrich?
Come on, people,
stop it, stop this sort of thing.

そして、これがオリジナルの日本語。覚えてますか?

ぼろぼろな駝鳥

何が面白くて駝鳥を飼ふのだ。
動物園の四坪半(よつぼはん)のぬかるみの中では、
脚が大股(おおまた)過ぎるぢやないか。
頸(くび)があんまり長過ぎるぢやないか。
雪の降る国にこれでは羽がぼろぼろ過ぎるぢやないか。
腹がへるから堅(かた)パンも食ふだらうが、
駝鳥の眼は遠くばかり見てゐるぢやないか。
身も世もない様に燃えてゐるぢやないか。
瑠璃色の風が今にも吹いて来るのを待ちかまへてゐるぢやないか。
あの小さな素朴な頭が無辺大の夢で逆(さか)まいてゐるぢやないか。
これはもう駝鳥ぢやないぢやないか。
人間よ、
もう止(よ)せ、こんな事は。

今、読んでも悲しくなる一遍。

サンニッチの駝鳥農場のウェブサイトによると、駝鳥のお肉は「高たんぱく質」「低カロリー」「低コレステロール」「低脂肪」なんだそう。そういう利点があるとわかっても、食べたいとは思わないなー。

でも、ひとつ、びっくりしたのは、駝鳥って平均して75年生きるんだって。「長生きする鳥」だと思っていた「鶴」でさえ、せいぜい寿命が60歳だそうだから、駝鳥、やるじゃん。野生の駝鳥は天敵もいるから、平均寿命は30~70歳と幅が広まるらしいけど。

それから、だちょうの卵1個=にわとりの卵約12個 だそうです。ふむ。黄身だけをたくさん使うパウンドケーキを作るのに、駝鳥の卵がひとつあると便利だねー。

卵

駝鳥を想った金曜日の夕方でした。