父の詩

父から妹へ。

新婦の父親がメッセージを送ることは珍しいらしい。「読みたい」という父のリクエストだった。涙を考慮してお色直しの前に。

口数少なく、何を思っているのかよくわからないことも多い父の、妹への想いがつまっている。最後まで泣かずに読みとげたお父さん。頑張った。

嫁ぎゆく娘に

十一月三日はお前の誕生日
菊の花が咲き誇る頃お前は生まれた
そして今日の佳き日 晴れの衣装を着て
お前は嫁いでゆく
それを思うと菊の真っ白い香り高い花が
おのずと瞼に浮かんでくる
わたしがもっとも愛する花
お前に「佳子」と名づけたのは
大地の中に佳き土を融け合わせ
自分の花を咲かせて欲しいと願った

この佳き日に想い出すことがある
バングラデッシュで命を授かり
はいはいが出来るようになった佳子は
七匹の子犬とベランダで戯れていた
中国上海での高校三年間
中国語 英語で苦労しながら学び続け
グローバルな光と影を体験して
その後の思考生活の礎を培った
小学生のころから舞い続けてきた日本の舞
日舞の中には 流れと一瞬の静止があって
快いリズムを醸し出す
佳子はこのリズムを生活の中に生かしてきた
これからの舞を創造して欲しい

小さい立木に寄り添って
朝も夜も祈りながら
見守っている「親」という字
そんな想いでお前を育ててきた
私たちの願いを思い起してもらいたい

そして今 素敵な伴侶と共に
新しく出発するお前に
こうして多くの方々から祝福の花をいただき
喜びの言葉を贈っているのだ
よい妻となれ
よい母となれ
よい人となれ

今年も育てているそうです。父の菊。photo by Yuki